manvaのエンジニアリング魂

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マウス内蔵キーボードの作り方(Ver.0.4) Fusion360で筐体作成

現在開発中のマウス内蔵キーボードの筐体部分をどのように作ったかという話。

 

今回の開発のために、最適化されたクレイモデル上のキーの位置を正確に計測する手法を新たに開発した。その手法,バンブースキュアリング(bamboo skewering)により,ミリ単位での計測が可能となった。その様子を公開しよう。

 

↓バンブースキュアリング

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(粘土に竹串ぶっ刺して、印つけて、定規で測るw)

ほとばしる手作り感。プロが会社でやるには恥ずかしくて無理だろう。

 

これをCAD(Fusion360)に入力する。筐体を作る前に,まずスイッチを作る。Kailhロープロファイルスイッチの図面を見て寸法を確認しながら概略の形を作成。

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中央にぐるっと一周している細い出っ張りの下面が筐体と接触する面。

別ファイルを作成して,このスイッチを並べていく。まずは上面のキーのみの確認。1個ずつ手動で回転させて、CAD上で四隅の高さを確認、竹串の結果と比べて、ずれていればまた回転、という感じでアナログ的に合わせた。結構しんどい。とりあえず3Dプリントして位置関係を確認するためにスイッチ同士を適当につなげている。

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プリントしたものがこちら。

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プリントして触ってみたら気に入らず、修正、というのも何度かして、ようやく満足のいくものができた。

キーキャップは、写真のようにフラットな平面でいいんじゃないかと思ってる。人差し指ホームポジションの突起も要らないだろう。傾きでわかるし、手のひらを動かさないので、指の力を抜いたところがホームポジションだ。

 

スイッチの位置が決まったら,そこに合うように筐体を作る。Fusion360のスカルプトモデリング機能(「フォームを作成」)で,まずはだいたいの形を作る↓。少しキーが埋まるくらいに合わせている。

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keybouse0p4筐体

 この中が詰まった塊の状態から,表面だけを残して底面からくり抜く。単純な形なら「シェル」コマンドでいけるが,曲面のカーブがきつすぎたりするとエラーになってしまう。前作まではシェルでできるように形状を修正していたが,もっといい方法があったので↓にまとめておいた。

manva.hatenablog.com

 

次に,スイッチが嵌るように,下図のような穴開きの窪みを作っていく。いろいろやり方はあるだろうが,配置したスイッチの細い出っ張りの下面やキーキャップのエッジを利用して,「オフセット平面」とか「2つの平面を通過する軸」とかを構築しながらなんとかする。面がたくさんあるので意外と大変だ。

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これを,3Dプリンタ(QIDI X-Maker)で出力しようとしたが,付属のスライサソフトQidi Printにロードしたら、出力できるサイズに寸法が収まっていない(「ビルトボリュームに入っていない」)というエラー。X-Makerのビルドサイズは170 x 150 x 160 mmであり,印刷しようとしたデータは167 x 138 x 81 mmなのでギリギリできるはず。

QIDI TECH社のサポートにメールで問い合わせたところ,即返答が来て解決した。

「アタッチ」の「ビルドプレート接着タイプ」の設定が,デフォルトで「スカート」になっている。これを「なし」にすることで最大のビルドサイズまでプリントできるようになるようだ。

QIDI TECH社のサポートは質問に対して12時間以内に返答する方針になっているらしく,Amazonのレビューなどでも非常に評判が良い。私の場合,12時間どころか6分で返事が来たし的確な回答だった。すごい。

私自身,あまり多くの3Dプリンタを使ったわけではないが,おすすめできるだろう。

● QIDI X-maker

Amazon↓は品切れがち。
https://www.amazon.co.jp/QIDI-TECHNOLOGY-Printer-Model-170x150x160mm/dp/B07W1Q449C

Banggood↓

jp.banggood.com

 

で、出来上がった筐体がこちら↓。0.3mmピッチ(粗め)で12時間かかった。

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Kailhのロープロファイルスイッチを嵌めてみる。だいたい良さそうだが,「J」を押した直後に「U」を押そうとする場合など,指が当たって引っかかる↓。ロープロファイルストロークは3mmと短いので,普通のスイッチよりはマシなはずだが,すり鉢状にしたせいでキーの上面が近すぎるのだろう。キーキャップの形状を決めるときに考慮する必要がありそうだ。

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細かい修正は必要だが,だいたいこれで筐体は完成した。といっても,これはまだフィット感の確認用の試作。このままだとはんだ付けできないので,最終的には,2分割か3分割にし,3Dプリンタの設定ももっと高精度にして出力する。

まだまだやることが多い。